インタビューから生まれたセラピー

インタビューをおこなうときのように、肯定的関心を持って質問をしていくことで、クライアントご自身の持っているさまざまな可能性に気づくお手伝いをするセラピーです。創始者が30年間1,800人にインタビューをおこなってきた経験をベースに心理的な安全面を考慮しつつ構築したものです。

①現在の悩み(または望み)
②ご自身の過去の物語を辿る
③テーマを決めず流れに任せる(自由連想法)

あらかじめ3つの中から選んでいただき、セラピストが「質問」することによって、その人が「心の底で感じていること」に少しずつ光を当てていきます。

「言えると癒える」と、よく云われているように、心の内を言葉にして表現することでカタルシス効果を得ることができ、また、能動的に質問されることによってあらたな「気づき」を得られます。

複数人数での会話では、それぞれの話は不完全燃焼に終わるもの。また、一対一であっても、親族や友人など身近な人との会話では、ついお互いに途中で口を挟んでしまいがちです。人から意見されたり遮られたりすることなく、自分の話を最後までじっくりゆっくり耳を傾けて聞いてもらうことは日常生活において意外に少ないものです。体験してみると、とても気持ちのいい時間となることでしょう。

カール・ロジャーズの三大要素を重視します

インタビューにおいて、インタビュアーは取材相手を丸ごと肯定的に受け止め理解しようと努めます。それでいて、取材相手に過度に同感・同調し過ぎることなく、少し俯瞰した視点を保ったまま、出版社の意図や読者層の興味・関心のある話を聞こうとします。

そのときインタビュアーにとって大切なことは、取材相手が初対面でも打ち解けられるようにオープンハートでいることです。そして、短時間でラポール(信頼関係)を築き、決まった時間のなかで質問していくために、取材対象に対して偏見のない曇りなき真摯な眼差しを持ち続け、自分自身に対しても素直である、という姿勢であり続けることが肝要です。

特に、深化させる質問をおこなう場合や、10代の新人俳優などとても緊張している相手にインタビューする場合、インタビュアーはミラーリングやペーシングをしっかりおこないます。そうすることで取材対象に「乱暴に介入しませんよ」「ちゃんと聞いていますよ」と非言語メッセージを送るのです。

これは「傾聴」を提唱したカール・ロジャーズの“パーソン・センタード”、つまりクライアント中心の非指示カウンセリングと、非常に似ています。

カール・ロジャーズは、これまで数十年の日本の心理業界に最も影響を与えた心理学者のひとりで、活躍中の臨床心理士やカウンセラーの多くは彼に影響を受けています。ひとつの正解に導いたりアドバイスを与えたりなどの「指示的アプローチ」をすることはありません。

カール・ロジャーズは「共感的理解」「無条件の肯定的配慮」「自己一致(純粋性)」という三大要素を提唱していました。これら3つが揃っていれば、心理学的知識があろうとなかろうと、クライアントの治癒、もしくは治療的人格変化が生じるという理論です。

共感的理解 (empathy, empathic understanding)
相手の話を、相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする。
※「共感」は「同感」や「実際に理解すること」とは異なります。

無条件の肯定的関心 (unconditional positive regard)
善悪、正誤、好き嫌いなどの評価をすることなく、否定することなく聴くこと。なぜそのように考えるようになったのか、その背景に「肯定的な関心」を持って聴く。そのことによって、話し手は安心して話ができる。

自己一致 (congruence)
セラピスト自身の姿勢として、相手に対してはもちろん、自分自身に対しても真摯な態度でいること。話がわかりにくい時はわかりにくいことを伝え、真意を確認する(わからないことをそのままにしたり、わかったふりをすることは、自己一致に反する)。純粋性と書かれていることもあります。

インタビューセラピー®においては、セラピストは傾聴するだけではなく、肯定的関心を持ちながら、あえて積極的に「質問」をしていきます。

パッシブリスニング(受動的:沈黙や相槌)
    +
アクティブリスニング(能動的:質問や確認)

どちらも使いながら質問したり、少し話を整理して要約して確認したりして、いっしょに心のもやもやを紐解きながら見ていきます。そのとき、クライアントの話にアドバイスしたりジャッジしたりすることはありません。

クライアントの心の自己治癒力を信頼しておこなうのは、傾聴と似ていますが、インタビューですので、能動的な質問が出てきます。心の安全のため、必ず「このことについてもう少し聞いてもいいですか?」と許可を得てからお答えいただきますが、もちろん話したくないことは話さなくても大丈夫です。ご自身の「嫌だな」と感じる気持ちを尊重いたします。こちらから根掘り葉掘り質問を重ねることはありません。

インタビューセラピー®におけるアクティブリスニングでは、セラピストが「あなたは○○なんですね?」という「YOUメッセージ」で断定的な言葉で確認することはありません。「いまの話を聞いて、私はこのように感じましたが、いかがでしょうか?」と、「Iメッセージ」によってセラピストのその時点での解釈や感想を伝えて確認することがあります。

目的は「たまねぎの皮むき」のお手伝い

世の中に「カウンセリング」と名のつくものは多種多様にありますが、臨床心理士になるための勉強をしてきた人の多くは、クライアント中心(パーソンセンタード)というカール・ロジャーズの流れに影響を受けています。非指示アプローチと云われるように、セラピストの主観でアドバイスしたり語ったりすることはありません。

民間資格の心理カウンセラーは、定義も知識も在り方もそれぞれで、場合によってはアドバイスをすることもあります。カール・ロジャーズ以前のカウンセリングは、指示的アプローチが当たり前だったこと、カール・ロジャーズ自身も最初は指示的アプローチをおこなっていたことを考えると、それも効果のある一つの手法であることも間違いないのでしょう。

とはいえアドバイスを与えることによる弊害として、以下のようなことが考えられます。

・アドバイスが必ずしもそのクライアントにとって合うとは限らない
・クライアントが自分で気づき成長する機会を奪うことになってしまう
・セラピストの自己満足(承認欲求が満たされる)という目的にすり替わってしまう

クライアントがより大きな精神的成長(自己変容)を遂げるには、やはり「自分で気づく」ことが重要です。そういった心の成長を、心理やセラピーの業界ではよく、心の「玉ねぎの皮むき」と表現します。心が玉ねぎのように幾重にも重なっているとして、外側から一枚ずつ皮がむけていって、いつか自分の「本当の想い」にたどり着けるのです。

インタビューセラピーは、その「気づき」を「質問」によってサポートします。

ゆえに、インタビューセラピー®が仮に「ゴール」を設定するとしたら、それは心の「たまねぎの皮を一枚剥く」こと。そのお手伝いをするのがインタビューセラピー®のセラピストの仕事です。

セラピストが、自分自身を信じ、クライアントの自己治癒力を信じる。
それがインタビューセラピーの絶対条件なのです。

ルールのある安全な質問をしていきます

インタビューセラピー®において、一度のカウンセリングに対して、クライアントの収穫は確実にこれだけある……と提示できるものはありません。

初回でクライアント自身がなんらかの「手応え」を感じるほうが、すぐに受け入れられ喜ばれるものかもしれません。セラピスト側も、「アドバイス」というお土産を持って帰っていただこうとしてしまうこともあるでしょう。「時間とお金をかけてよかった」と一度で思ってもらえるほうが、セラピストもクライアントも、その場では幸せかもしれません。

しかし、それは一時的なものです。いわゆる対症療法と同じで、「その場ではいい気がしたのだけれど……」ということになり、またいつもの生活に戻ると、なにか不満が起こってくる。その繰り返しになってしまうのです。

たまねぎの皮をむくのに大切なのは「タイミング」と「自主性」。

・本人が気づくこと
・本人の意思で剥くこと
・本人が剥くと決断すること

そのために、前出の内容とも重複しますが、インタビューセラピー®では、以下の5つをNGルールとしています。

【インタビューセラピーの5つのNG】

①アドバイスやジャッジをする
②意図的に「答え」へと導く
③無理に過去から原因を探ろうとする
④クライアントを元気づけたり励ましたりする
⑤許可を得ずに「深化させる質問」をおなこう

あくまでも、クライアントに必要な「気づき」が起こることを信じて待つ。そうすると不思議なぐらいに、クライアント自ら「私、○○だと思い込んでいたんですね」と、自分の持つ不要なイラショナル・ビリーフ(「非合理的思考」自分の思考や行動を束縛する思い込み)について気づき、声に出して話していただけるのです。そして、それがカタルシス効果を生むのです。

クライアントを信じ尊重します

インタビューセラピー®では、「定型の質問」を用意しているわけではありません。人生経験のある、そして、人として信頼のおけるセラピストが、安易にクライアントの心に「侵略」することなく、そして、クライアントの「いま」の状態に合わせた質問を選択して、投げかけていきます。

それはまるで電車に乗っていてトンネルに入ったときに窓ガラスに映る自分を見て、「あれ? 思ったより疲れた顔してる!」と気づかされるような、そんな役割を果たします。そして、そんなクライアントを丸ごとひっくるめて受け止められる愛のあるセラピストに伝授しています。

ポジティブじゃない私を見せたくない。
迷ってばかりの私を見せたくない。

……そんな人でも安心して話ができるほど「人間が好き」というセラピストですのでご安心ください。

また、インタビューセラピスト養成講座では、自分を知るための講座や自己表現の講座をいくつも受講してもらっています。なおかつ、実際にインタビューして練習していただき、その音源を聞いて、安全に質問できているかどうかフィードバックしています。

セラピストが質問をしつつ、クライアントのペースをゆっくり待つことができれば、ご自身で気づくことができるのです。長い目で見た本当の意味での「幸せを感じる心身」になるには、これが重要です。

その方に必要なタイミングで、必要なことが起こる。

クライアント自身、クライアントの人生そのもの。それらを信頼し、尊重するのが、インタビューセラピー®です。大きな深い愛情に包まれた、安心できる「インタビュー」の場で、見守ってもらいながら「内省」していく。「自分との対話」にそっと寄り添う、そんなあたたかいセラピーです。